良い歯医者さんと生活習慣

良い歯医者さんって何?

「良い歯医者さん」とは一体どのような人物を指すのか、その明確な基準を見出すことは、実は非常に難しい問題であると、私は日頃から感じています。

なぜなら、歯科医師に対して抱く印象や価値観というものは、患者さまお一人おひとりの感性や、これまでの人生経験によって、大きく左右されるものだからです。

ある方にとってはまったく気にも留めない、何気ない言葉遣いや態度であっても、別の方にとってはそれが深く心に残り、不安や違和感、時には不信感を生んでしまうことも決して珍しくありません。

そのため、ご友人やご家族からの「以前通っていたけれど、あそこの歯医者さんはとても良かったよ」という紹介は、確かに安心材料の一つにはなります。

しかしながら、その評価が、そのままあなたご自身にも当てはまるとは限らない、という難しさがあるのも事実です。

紹介された歯科医院が、必ずしもあなたにとって心から落ち着ける場所であり、安心して通い続けられる存在になるとは言い切れないのです。

一般的には、「技術力が高い歯科医師こそが、良い歯科医師である」と語られることが多いように思います。

けれども、その「技術」という言葉自体も、実は非常に曖昧で、一概に定義できるものではありません。

多くの方は、技術の高さを「治療した歯がどれだけ長くもつか」「再治療が必要にならないか」といった、目に見える結果によって判断されがちです。

しかし、たとえ歯科医師がまったく同じ精度、同じ手順、同じ材料を用いて治療を行ったとしても、その後の経過が常に同じになるとは限りません。

例えば、10代や20代の、歯や骨が健康で再生力の高い状態で行う治療と、60代を迎え、歯の揺れや歯周病の進行、歯根の破折といったリスクを抱えた状態で行う治療とでは、その後の安定性や予後が大きく異なってしまうことは、決して珍しいことではないのです。

つまり、治療の結果は歯科医師の技術だけで決まるものではなく、患者さまの年齢、全身状態、口腔内の環境、さらにはこれまでの生活習慣や背景によっても、大きく影響を受けるという現実があります。

さらに、状態の思わしくない歯を「何とかして残したい」「一本でも多く自分の歯を守りたい」という患者さまの強いお気持ちに応えようと、歯科医師が心血を注いで治療に取り組めば取り組むほど、皮肉にも治療後に細かなトラブルが起こりやすくなる、という側面も存在します。

極端な言い方をすれば、少しでも不安要素のある歯はすべて抜歯し、むし歯も大きく削って、人工物でしっかりと作り替えてしまった方が、短期的にはトラブルが少なく、通院回数も減るかもしれません。

しかし、そのように効率や目先の結果だけを重視した、機械的とも言える治療が、20年、30年という長い年月をかけて人生を歩んでいく中で、本当に患者さまの将来を豊かにするのかどうかは、また別の問題です。「治療をしたから長持ちする」という事実が、必ずしも「患者さまのQOL、すなわち生活の質が向上する」ことと直結するわけではないのです。

このように一つひとつ丁寧に考えを巡らせていくほど、「では結局、自分にとって本当に良い歯医者さんとは誰なのか」という問いに対する答えは、かえって見えにくくなってしまうかもしれません。

そのような中で、私自身が一人の歯科医師として、そして一人の人間として大切にしている、「良い歯医者さん」の定義があります。

それは、確かな技術を磨き続けることを大前提としながらも、それ以上に、患者さまの心の揺れや、不安、迷い、そして言葉にならない想いを、できる限り深く、真剣に汲み取ろうとする姿勢を持ち続けられる人である、ということです。

どのような状況においても感情に振り回されることなく、穏やかな心で患者さまのお話に耳を傾けること。

そして、その時々の口腔内の状態だけでなく、年齢や生活背景、人生の歩みまでを踏まえたうえで、医学的な正論だけに偏ることなく、その方にとって本当に必要で、無理のない選択肢やアドバイスをお伝えできること。

私自身、患者さまにとってそのような存在でありたいと心から願いながら、日々の診療一つひとつと誠実に向き合い、理想に少しでも近づけるよう、地道な努力を積み重ねております。




生活習慣について



開業してから数年の月日が流れ、日々の診療にもようやく落ち着きと、わずかな余裕が生まれてきた頃、私は歯科医師としての在り方そのものを深く見つめ直さざるを得ない、いくつかの大きな転換点となる経験を重ねることになりました。

それらは、技術や知識だけでは決して答えの出ない問いを、私の心に突きつける出来事でもありました。

その一つが、ある患者さまとの出会いです。

その方は、お口の中のほとんどすべての歯にむし歯を抱えておられ、私は歯科医師としてでき得る限りの最善を尽くそうと、長い時間をかけて一本一本に向き合い、細部にまで注意を払いながら、精緻な治療を行いました。

医学的にも理論的にも、これ以上ないと自負できるほどの治療を終えたはずでした。

しかし、私の予想に反して、治療が終わったそばから、次々と新しいむし歯が発生していったのです。

「医学的に正しい処置を、あれほど丁寧に施したにもかかわらず、なぜこのようなことが起こるのだろうか」。私は何度も自問自答を繰り返し、言葉にできない無力感と深い疑問に包まれました。

また、別の重度の歯周病を患われていた患者さまのケースも、私にとって忘れることのできない重要な学びとなりました。

その方は、歯ぐきが大きく腫れ上がり、非常に厳しい状態にありましたが、私が時間をかけて歯磨き指導を行い、患者さまご自身もその想いに応えようと、懸命に努力を重ねてくださいました。

その結果、一時は見違えるほど歯ぐきの状態が改善し、無事に歯周病治療を終えることができたのです。

しかし、歯科治療の本当の意味での試練は、「治療が終わった後」に待っていました。その後も定期的に経過を見守っていく中で、月日が経つにつれ、再び歯ぐきにわずかな腫れが現れ、静かに、しかし確実に歯周病が再進行していったのです。

歯の表面は清潔に保たれ、汚れ一つ見当たらないほど丁寧に磨けている。それにもかかわらず、なぜ病は再発してしまうのか。この現実を前に、私は再び深い困惑と行き詰まりを感じました。

こうした経験を重ねる中で、私は次第に、「お口の中の状態だけを見ていては、本当の健康は守れないのではないか」という強い思いを抱くようになりました。

その答えを求めて、膨大な量の専門文献を読み漁り、数多くの講習会や勉強会にも足を運び、暗中模索の日々を続けました。

そして、長い試行錯誤の末に、ようやく一つの大きな結論へとたどり着いたのです。それが、「生活習慣」「ストレス」という、二つの根本的な要因でした。

振り返ってみると、むし歯がなかなか止まらなかった患者さまの多くには、仕事の合間に砂糖入りの缶コーヒーを頻繁に口にするなど、食生活そのものに明確な原因が潜んでいるケースが少なくありませんでした。

一方で、歯周病が再発してしまう患者さまの背景には、過度なストレスや、それに伴う免疫力の低下、さらには生活リズムの乱れといった問題が、深く関わっていることが次第に浮き彫りになってきたのです。「生活習慣とストレスこそが、病の本当の鍵である」という確信に至るまでには、実に一年以上の歳月を要しました。

お口という一部分だけを修復しても、その背後にある生き方や日々の積み重ねに目を向けなければ、根本的な解決には決してならない。

そう強く確信した私は、単なる対症療法としての歯科治療にとどまるのではなく、二つの柱を当院の揺るぎない診療目標として掲げることを決意しました。

一つは、患者さまご自身に日々の生活習慣を静かに振り返っていただき、私たちと共に、無理のない具体的な改善に取り組んでいただくこと。

もう一つは、現代社会において避けることのできない日常のストレスと、どのように向き合い、どのように受け流していくのか、その方法を患者さまと一緒に探し続けていくことです。

もちろん、歯科医師として「しっかりと噛める状態をつくること」が極めて重要であることは、誰よりも理解しているつもりです。

しかし現代の歯科医療は、その「機能」ばかりが強調される一方で、改善が難しいという理由から、生活習慣やストレスといった背景が、あまりにも軽視されているように感じてなりません。

確かに、長年にわたって染み付いた習慣や環境を変えることは、決して簡単なことではありません。

それでも、生活の在り方をほんの少し見直すだけで、将来起こり得る病を未然に防げる可能性は、大きく高まります。

当院へご来院くださる皆さまには、こうした考えを心のどこかに留めていただきながら、私たちとの対話を通じて、少しずつでも「真の健康」というゴールへ向かって歩みを進めていただければと、心から願っております。

それが私たち細川歯科医院の心からの願いです。

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