細川歯科医院が大切にしている名声や金銭に対する考え方は、一般的にイメージされる歯科医院の在り方とは、少し異なるかもしれません。
院長である私は、自分自身の名声や富に対して、驚くほど執着心を持っていません。
それは決して理想論や綺麗事ではなく、これまで歯科医師として、また一人の人間として歩んできた中で、自然とたどり着いた価値観です。
まず名声について言えば、私は過度な肩書きや誇示は、人としての成長を止めてしまう大きな障壁になると感じています。
歯科医療の世界は非常に奥深く、補綴、保存、歯周病、咬合、メンテナンスなど、どれだけ一つの分野で評価を得たとしても、別の分野に目を向ければ、そこではまた一から学び直す「見習い」にすぎません。
しかし、一度名声やプライドを手にしてしまうと、その誇りが邪魔をして、初歩的なセミナーに参加することや、若い先生の意見に耳を傾けることさえ難しくなってしまうのが現実です。
名声に憧れる気持ちは、学び始めの段階では確かに原動力になることもありますが、ある程度の経験を積んだ後には、むしろ成長を妨げる足かせになってしまう不要なものだと感じています。
ホームページに並ぶ立派な肩書きよりも、目の前の患者様にどれだけ誠実に向き合えているか、その一点こそが歯科医師としての本質であると、私は信じています。
お金に対する考え方も同様です。
人が生活していく上で最低限の蓄えは必要不可欠ですが、それ以上の過度な執着は、人の心や判断を不自由にしてしまいます。
歯科医師の世界では、高級車や高級時計を所有することが、いつの間にか一種の成功の象徴のように語られ、集まりの場がまるで品評会のようになることも珍しくありません。
正直に言えば、私自身もかつてはそうした空気の中に身を置き、知らず知らずのうちに高級志向に引き寄せられそうになった時期がありました。
しかし、一度贅沢な生活水準に慣れてしまえば、経営が厳しくなったときにそれを下げることは想像以上に難しく、結果として無理な診療や判断を招く危険性があります。
本来、歯科医院が投資すべきものは、自分を飾るための物欲ではなく、患者様のための設備や環境、そして共に働くスタッフの待遇や成長のためのものです。
私は、自分の価値観が周囲の空気に流されてしまうことを避けるため、現在はそうした歯科医師同士の華やかな集まりから、あえて距離を置いています。

私にとって歯科医療とは、仕事であると同時に、ある意味では「趣味」に近い存在でもあります。
仕事が趣味であるがゆえに、効率や利益よりも、達成感や人の役に立てたという実感を優先してしまい、経営的な観点だけで見れば決して合理的とは言えない部分も多くあります。
近年は物価の高騰や人件費の上昇により、歯科医院を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。
一般的に歯科医院が収益を上げる方法は、自費診療を増やすか、患者様の予約を詰め込むか、診療時間を延ばすかのいずれかに集約されます。
しかし私は、強引な自費診療の勧誘は決して行いません。それは患者様が医院に不信感を抱き、転院を考える最大の要因であり、医療者として最も避けるべき行為だと考えているからです。
当院では丁寧にご説明とご相談を重ねますが、基本的には保険診療の範囲内で、その時点で考え得る最善を尽くすことを大切にしています。
患者様の詰め込みについても同様で、予約時間が形骸化し、十分な対話ができなくなることは、結果として医療の質を下げてしまいます。
そのため、これまでは非常にゆとりのある診療枠を設けてきましたが、診療報酬が長年変わらない現状を踏まえ、2026年から診療システムの大幅な見直しに踏み切ります。これまで60分確保していたメンテナンスの時間を、長年の経験から十分対応可能と判断した40分へ、また治療枠も30分から20分へと見直し、効率化を図っています。
これは患者様を詰め込むための変更ではなく、限られた時間の中で集中力と質を高め、最大限のパフォーマンスを発揮するための前向きな決断です。
さらに2026年からは、これまで休診としていた木曜日も診療を開始する予定です。
新たなドクターの採用も検討しましたが、技術や理念を十分に共有できないまま無理に拡大するよりも、私自身が責任を持って動ける範囲で対応することを選びました。
これまで木曜日は体を整える時間や休息にあててきましたが、今後はその時間を患者様のために使っていきます。
ただし、月曜日から土曜日まで長時間働き続けることは現実的ではないため、一日の診療時間は全体的に短縮し、より濃密で、心にゆとりを持って患者様をお迎えできる体制を整えました。
開業から25年が経ち、人生の前半戦を終えた今、これからの後半戦25年に向けた大きな転換期として迎えたのが2025年でした。
産休や世代交代を経て新たに集まってくれたスタッフたちは、皆人柄が良く、私のこうした価値観や新しい方針にも深く共感してくれています。
彼女たちの理解と協力があったからこそ、今回の大きなリニューアルに踏み切ることができました。
2026年、細川歯科医院はこれまで以上に、患者様お一人おひとりに真心を尽くす歯科医院として、静かに、しかし確かな一歩を踏み出してまいります。
