細川歯科医院における仕事への考え方の根底には、院長が自らを単なる歯科医師としてではなく、一つの組織とその未来を預かる「経営者」であると強く自覚している姿勢があります。
診療技術を磨き、目の前の患者様に誠実に向き合うことは医療人として当然の責務である一方で、医院という場を継続的に機能させ、安心して医療を提供し続けるためには、経営の安定、職場環境の整備、そして共に働くスタッフ一人ひとりの人生や幸福にまで思いを巡らせる長期的かつ総合的な視点が欠かせません。
組織というものは、規則や言葉だけで動くものではなく、日々の積み重ねの中で形成される空気や価値観によって育まれていくものであり、その中心に立つ院長の在り方こそが、医院全体の文化を決定づけるものだと考えています。
スタッフは常に院長の背中を見ながら、自分がどう振る舞うべきかを無意識のうちに学び取っていく存在であるからこそ、院長自身が誰よりも自らに厳しく、誠実で、責任を引き受ける姿勢を貫き続けることが、何よりの教育であり信頼の源になるのです。
その信念は日々の行動にも如実に表れています。院長は誰よりも早く診療所に足を運び、患者様とスタッフを気持ちよく迎えるために空調や院内環境を整え、目立たない細かな準備を黙々とこなします
そして一日の診療がすべて終わった後には、最後の一人として院内を見渡し、戸締まりをして静かに明かりを落とします。こうした一つひとつの行動は特別なことではなく、経営者として当然果たすべき責任であり、言葉で指示を出す前に自ら実践するという姿勢の表れです。
どれほど正しいことを語ったとしても、行動が伴わなければ人の心は動かず、信頼も生まれません。真に機能するチーム医療を築くためには、肩書きや上下関係で人を従わせるのではなく、トップが自らの人間性と器を磨き続け、その背中を通じて自然と信頼を集めていくことが不可欠なのです。
また、院長にとって仕事と私生活の間には、明確な境界線はほとんど存在しません。
世の中には「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と割り切る考え方もありますが、それは組織に守られた立場だからこそ成り立つ発想であり、医院のすべてに責任を負う個人事業主である院長の在り方とは本質的に異なります。
休日であっても、通勤途中の何気ない風景の中でも、あるいは一日の終わりに静かに眠りにつく直前でさえ、「どうすれば医院をより良くできるか」「どうすれば患者様やスタッフに、より多くの安心や喜びを還元できるか」という問いは途切れることなく心の中にあり続けます。
この24時間、365日にわたる絶え間ない思考と向き合いの積み重ねこそが、より質の高い医療サービスを生み出す原動力となり、細川歯科医院が長年にわたって信頼を積み重ねてきた確かな礎となっているのです。

細川歯科医院が大切にしている名声や金銭に対する考え方は、一般的にイメージされる歯科医院の在り方とは、少し異なるかもしれません。
院長である私は、自分自身の名声や富に対して、驚くほど執着心を持っていません。
それは決して理想論や綺麗事ではなく、これまで歯科医師として、また一人の人間として歩んできた中で、自然とたどり着いた価値観です。
まず名声について言えば、私は過度な肩書きや誇示は、人としての成長を止めてしまう大きな障壁になると感じています。
歯科医療の世界は非常に奥深く、補綴、保存、歯周病、咬合、メンテナンスなど、どれだけ一つの分野で評価を得たとしても、別の分野に目を向ければ、そこではまた一から学び直す「見習い」にすぎません。
しかし、一度名声やプライドを手にしてしまうと、その誇りが邪魔をして、初歩的なセミナーに参加することや、若い先生の意見に耳を傾けることさえ難しくなってしまうのが現実です。
名声に憧れる気持ちは、学び始めの段階では確かに原動力になることもありますが、ある程度の経験を積んだ後には、むしろ成長を妨げる足かせになってしまう不要なものだと感じています。
ホームページに並ぶ立派な肩書きよりも、目の前の患者様にどれだけ誠実に向き合えているか、その一点こそが歯科医師としての本質であると、私は信じています。
お金に対する考え方も同様です。
人が生活していく上で最低限の蓄えは必要不可欠ですが、それ以上の過度な執着は、人の心や判断を不自由にしてしまいます。
歯科医師の世界では、高級車や高級時計を所有することが、いつの間にか一種の成功の象徴のように語られ、集まりの場がまるで品評会のようになることも珍しくありません。
正直に言えば、私自身もかつてはそうした空気の中に身を置き、知らず知らずのうちに高級志向に引き寄せられそうになった時期がありました。
しかし、一度贅沢な生活水準に慣れてしまえば、経営が厳しくなったときにそれを下げることは想像以上に難しく、結果として無理な診療や判断を招く危険性があります。
本来、歯科医院が投資すべきものは、自分を飾るための物欲ではなく、患者様のための設備や環境、そして共に働くスタッフの待遇や成長のためのものです。
私は、自分の価値観が周囲の空気に流されてしまうことを避けるため、現在はそうした歯科医師同士の華やかな集まりから、あえて距離を置いています。

私にとって歯科医療とは、仕事であると同時に、ある意味では「趣味」に近い存在でもあります。
仕事が趣味であるがゆえに、効率や利益よりも、達成感や人の役に立てたという実感を優先してしまい、経営的な観点だけで見れば決して合理的とは言えない部分も多くあります。
近年は物価の高騰や人件費の上昇により、歯科医院を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。
一般的に歯科医院が収益を上げる方法は、自費診療を増やすか、患者様の予約を詰め込むか、診療時間を延ばすかのいずれかに集約されます。
しかし私は、強引な自費診療の勧誘は決して行いません。それは患者様が医院に不信感を抱き、転院を考える最大の要因であり、医療者として最も避けるべき行為だと考えているからです。
当院では丁寧にご説明とご相談を重ねますが、基本的には保険診療の範囲内で、その時点で考え得る最善を尽くすことを大切にしています。
患者様の詰め込みについても同様で、予約時間が形骸化し、十分な対話ができなくなることは、結果として医療の質を下げてしまいます。
そのため、これまでは非常にゆとりのある診療枠を設けてきましたが、診療報酬が長年変わらない現状を踏まえ、2026年から診療システムの大幅な見直しに踏み切ります。これまで60分確保していたメンテナンスの時間を、長年の経験から十分対応可能と判断した40分へ、また治療枠も30分から20分へと見直し、効率化を図っています。
これは患者様を詰め込むための変更ではなく、限られた時間の中で集中力と質を高め、最大限のパフォーマンスを発揮するための前向きな決断です。
さらに2026年からは、これまで休診としていた木曜日も診療を開始する予定です。
新たなドクターの採用も検討しましたが、技術や理念を十分に共有できないまま無理に拡大するよりも、私自身が責任を持って動ける範囲で対応することを選びました。
これまで木曜日は体を整える時間や休息にあててきましたが、今後はその時間を患者様のために使っていきます。
ただし、月曜日から土曜日まで長時間働き続けることは現実的ではないため、一日の診療時間は全体的に短縮し、より濃密で、心にゆとりを持って患者様をお迎えできる体制を整えました。
開業から25年が経ち、人生の前半戦を終えた今、これからの後半戦25年に向けた大きな転換期として迎えたのが2025年でした。
産休や世代交代を経て新たに集まってくれたスタッフたちは、皆人柄が良く、私のこうした価値観や新しい方針にも深く共感してくれています。
彼女たちの理解と協力があったからこそ、今回の大きなリニューアルに踏み切ることができました。
2026年、細川歯科医院はこれまで以上に、患者様お一人おひとりに真心を尽くす歯科医院として、静かに、しかし確かな一歩を踏み出してまいります。

細川歯科医院における消毒・滅菌への取り組みは、単に日々の診療で使用した器具をきれいにするための付随的な作業ではありません。
患者様お一人おひとりの尊い命と、生涯にわたる健康を守り続けるための根幹、すなわち歯科医療そのものを支える「診療の土台」であると、私たちは強い信念をもって捉えております。
歯科治療という医療行為は、虫歯や歯周病の治療、抜歯やインプラントなどの外科処置、さらには定期的なメンテナンスやクリーニングに至るまで、ほぼすべての工程において医療器具が口腔内の粘膜や歯肉、場合によっては骨や深部組織に直接触れるという特性を持っています。
その器具には、目で確認することはできなくとも、唾液や血液が必ず付着しており、B型・C型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、さらには近年大きな問題となっている薬剤耐性菌など、重篤な感染症を引き起こし得る病原体が存在している可能性を、常に否定することはできません。
これらの病原体は、ほんのわずかな量であっても感染を成立させるほど強い感染力を持つものも多く、だからこそ一つひとつの処置ごとに、確実で信頼性の高い消毒と滅菌を行い、感染のリスクを限りなくゼロに近づけることは、医療に携わる者として決して妥協することのできない絶対的な責務であると考えております。
しかしながら、歯科業界全体の現状に目を向けますと、消毒・滅菌という工程は患者様から直接見えにくい部分であるがゆえに、時間やコストを優先し、必要最低限の対応に留めてしまっているケースが、残念ながら存在するのも事実です。
診療台に整然と並べられた器具が、どのような手順を踏み、どれほど厳密な管理のもとで清潔な状態を保たれているのかを、者様ご自身が正確に把握することは容易ではありません。
こうした「見えない工程」は、経営効率を重視するあまり、どうしても後回しにされがちな側面があります。
実際、極端な例では、歯を削るためのタービンのように内部構造が非常に複雑で、本来は徹底した滅菌が不可欠な精密器具であっても、使用後にアルコール綿で表面を拭くだけで次の患者様に再使用している医院が、いまだに存在すると言われています。
しかし、そのような方法では内部に残存する汚れや病原体を完全に除去することは不可能であり、そこには看過できない感染リスクが残されたままとなってしまいます。
当院では、このような妥協や慣習を一切排除し、本気で消毒・滅菌を徹底するために、目に見えない部分にこそ積極的な設備投資と厳格な維持管理を行ってまいりました。
たとえばタービン一つを考えても、患者様ごとに必ず滅菌済みのものへ交換する体制を維持するためには、1本あたり約7万円する器具を30本から50本ほど常備し、それらを安全かつ短時間で処理できる高性能な専用滅菌器を、常時稼働させる必要があります。
現在、多くの歯科医院では煮沸消毒に代わり、高圧蒸気滅菌、いわゆるオートクレーブが使用されていますが、その性能や信頼性には大きな差があります。
安価な小型機の場合、器具を詰め込みすぎると蒸気が十分に行き渡らず、滅菌が不完全な部分が生じる危険性も否定できません。
当院では、庫内に十分な余裕を持たせた大型の装置で、真空状態を作りながら蒸気を器具の深部まで確実に浸透させることができる、最高水準の高性能オートクレーブを採用しております。
これにより、複雑な形状を持つ器具の内部に至るまで、死滅させるべき菌やウイルスを確実に排除できる体制を整えています。
さらに、当院の衛生管理の姿勢を象徴する設備として、医療現場専用の高性能洗浄機であるウォッシャーディスインフェクターを導入しております。
この装置は、水温を段階的かつ精密に制御しながら洗浄を行うことで、血液などのタンパク汚れを完全に分解・除去すると同時に、熱による消毒・殺菌を実現するものです。
手洗いでは決して到達できない細部の汚れまで確実に取り除くことが可能であり、衛生レベルの均一化にもつながります。
また、スタッフが鋭利な器具を直接手で洗う必要がなくなるため、針刺し事故やそれに伴う二次感染のリスクをほぼ排除できるという大きな利点もあります。
この機器は本体価格が約250万円と非常に高額であるうえ、設置には大規模な配管工事が必要となるため、全国的に見ても導入している歯科医院はごく限られています。それでも当院が導入を決断したのは、患者様の安全はもちろん、日々最前線で診療を支えるスタッフの健康と安心を守りたいという強い思いがあったからです。
特に専門的な知識を有する歯科衛生士は、消毒・滅菌の重要性を誰よりも深く理解しており、その目は常に厳しく現場を見つめています。
彼女たちが自らの仕事に誇りを持ち、安心して長く働き続けられる環境を整えることこそが、結果として患者様へ提供する医療の質を高めることにつながると、私たちは信じています。
加えて当院では、高温に弱くオートクレーブでは処理できないプラスチック製品や精密機器のためにガス滅菌器を使用し、さらに肉眼では確認できない微細な溝や隙間の汚れを除去するために超音波洗浄機も併用するなど、複数の工程を組み合わせた多段階の滅菌体制を構築しております。
これらの設備を維持し、正しく運用し続けるためには、多大なコストと時間、そしてスタッフの高い意識が必要となりますが、私たちはこれこそが医療の質と信頼を左右する最重要事項であると考えています。
滅菌を終えた器具は、大きさや用途に応じて一つひとつ丁寧に専用の滅菌バッグに封入し、シーラーで完全に密閉したうえで、実際に使用する直前に患者様の目の前で開封することを徹底しております。
消毒・滅菌という工程は、意識を緩めればいくらでも簡略化できてしまう部分です。だからこそ私たちは、この「見えない部分」にどこまで誠実に向き合えるかが、歯科医院としての品格と患者様からの信頼を決定づけると考えております。
実際、衛生管理に真摯に取り組んでいる医院は、治療技術や患者様とのコミュニケーションにおいても高い水準を保っていることが多いと、私たちは日々感じています。
「消毒・滅菌オタク」と評されることもあるほど徹底した当院の姿勢は、決して自己満足や過度なこだわりではありません。患者様が心から安心して治療を受けていただくための、決して譲ることのできない信念そのものです。
これからも私たちは、最新の知見と技術を柔軟に取り入れながら、清潔で安全、そして信頼に足る歯科医療を提供し続けることを、ここにお約束いたします。

細川歯科医院が、他の多くの歯科医院と明確に一線を画していると自負している点は、最新の治療技術や高価な設備といった目に見えやすい要素以前に、歯科医療そのものにどう向き合うのかという、極めて根本的な「治療に対する考え方」そのものにあります。
私たちは、どのような価値観を最も大切にし、どのような信念に基づいて日々患者さまと向き合っているのか、その揺るぎない核心部分を、誤解のないよう丁寧にお伝えしたいと考えています。
一般的に歯科医院を受診される方の多くは、歯が痛む、噛むと違和感がある、腫れているといった、「今まさに困っている具体的な症状」を抱えて来院されます。
当院では、まず何よりもその切実な訴えを正確に受け止め、患者さまが感じている不安や苦痛を、可能な限り速やかに取り除くことを、診療の最優先事項としています。
これは医療の基本中の基本であり、「主訴の解決」と呼ばれる極めて重要なステップです。
現在の苦痛が解消されないままでは、患者さまが安心して次の話を聞いたり、将来のお口の健康について考えたりする余裕は生まれません。
だからこそ私たちは、まず目の前の問題に真摯に向き合い、確実な処置を行うことで、信頼関係の第一歩を築くことを大切にしています。

そして、その主訴が落ち着いた後に、他の部位の治療をどうしていくかについては、決して医療者側の価値観や都合を一方的に押し付けることはありません。
患者さまと十分な時間をかけて対話を重ね、ご本人が何を望み、これからどのようなお口の状態で過ごしていきたいのか、その意思や将来像を共有したうえで、本当に必要だと双方が納得した場合にのみ、次のステップへ進むという姿勢を徹底しています。
治療期間に対する考え方についても、当院は一般的なイメージとは大きく異なる視点を持っています。歯科治療はしばしば、「数か月から半年、あるいは一年以内に終わらせるもの」と捉えられがちですが、こうした時間的な枠を優先した治療は、ともすると医療側の都合による押し付けとなり、患者さまにとって過度な負担や精神的なストレスを生む原因になりかねません。
私たちは、治療のゴールを短期的な期間設定で考えることはありません。
細川歯科医院が見据えている真のゴールは、患者さまがその人生を全うされる最期の瞬間まで、ご自身の歯で食事を楽しみ、不安なく噛める状態を、できる限り維持し続けることにあります。
治療とは、一時的に悪い部分を修復して終わりにする作業ではなく、生涯にわたってお口の健康を支え続けるための長い道のりを、患者さまとともに歩む「伴走」であるべきだと、私たちは考えています。
歯科の二大疾患である、むし歯と歯周病に対しても、当院はこの考え方に基づいた明確な哲学を持って向き合っています。
むし歯について言えば、かつて主流であった「早期発見・早期治療」、すなわち見つけ次第すぐに削って詰めるという考え方は、現代の歯科医療において、必ずしも最善とは言えません。
一度歯を削り、人工物を詰めれば、その境目から再びむし歯が生じる「二次カリエス」のリスクを、生涯にわたって抱えることになります。
私たちは、この「治療が次の治療を呼ぶ」という負の連鎖を断ち切るため、初期のむし歯に対しては安易に介入せず、慎重な経過観察を選択します。
具体的に治療を行うかどうかの判断は、見た目の色だけではなく、明確な欠損があるか、器具で触れた際に歯質の軟化が確認できるか、あるいはレントゲン画像で客観的に病変が認められるかといった、科学的根拠に基づいて行います。
こうして歯の組織の健全性を冷静に見極めることで、かけがえのない天然歯を、可能な限り長く残す努力を惜しみません。

一方、歯周病に関しては、単に歯石を取れば解決するような単純な病気ではなく、生活習慣や体質、さらには心のあり方までもが深く関わる、非常に奥の深い疾患であると捉えています。
教科書的な治療手順は存在しますが、患者さま一人ひとりの背景はまったく異なるため、画一的なマニュアルを当てはめることは決してしません。
その方の生活リズムや価値観に寄り添いながら、無理のない形で続けられる関わりを重視しています。
歯周病治療の本当の成否を分けるのは、処置そのものよりも、患者さまご自身の意識がどう変わり、日々の行動がどう変化していくかにあります。
私たちの役割は、単に一時的な治療を施すことではなく、患者さまが「自分のお口を大切にしたい」と心から思えるよう働きかけ、その思いを長期的な生活習慣の改善へとつなげていくことだと考えています。
ここで、あえてお伝えしなければならない重要な現実があります。それは、「治療を重ねれば重ねるほど、必ずしも歯が長持ちするわけではない」という事実です。
例えば、歯の根の治療を繰り返すと、どれほど丁寧に行ったとしても、歯の構造は少しずつ薄く、脆くなっていきます。その結果、見た目はきれいに整っていても、最終的には歯が縦に割れてしまう「歯根破折」を起こし、抜歯に至るケースが少なくありません。
こうした経験を積み重ねる中で、私は、「過度な治療介入こそが、歯の寿命を縮めているのではないか」という結論に至りました。
むやみに手を加えないこと、必要以上に治療をしないことこそが、結果的に歯を最も長く守る最善の選択となる場合があるのです。
だからこそ、当院の診療方針の核心は、「治療を必要最小限に留めること」にあります。主訴が解決した後は、四か月ごとの定期的なメインテナンスを通じて、お口の中の状態を丁寧に見守っていきます。
この時間は単なる検診ではなく、私たちにとっては極めて重要な「治療の一部」です。日々のセルフケアによって歯肉がどのように健やかに変化しているのか、初期のむし歯が進行せずに安定しているかを確認し、必要であれば最小限の助言や介入を行いながら、適切なタイミングが来るのを待つのです。

お口の病気は、長い年月をかけて、少しずつ進行してきた結果として現れるものです。だからこそ、回復への道のりもまた、焦らず、時間をかけて向き合う必要があります。
「早く終わらせることが正しい」という固定観念を手放し、必要なときに、必要な分だけ、適切な処置を行う。そのための「見守る勇気」と「最小限の介入」こそが、皆さまの大切な歯を一生涯守り抜くための、細川歯科医院の揺るぎないスタンスなのです。

デジタル歯科(デジタルデンティストリー)とは、歯科治療においてデジタル機器やコンピューター技術を積極的に活用することで、従来の治療方法をより効率的かつ高精度に行うことを可能にした新しい歯科医療のかたちです。近年、歯科医療全体でデジタル化の波が加速度的に進んでおり、補綴(詰め物・被せ物)、矯正、義歯の製作、画像診断など、さまざまな分野においてその技術が導入されつつあります。 たとえば、詰め物や被せ物の製作においては、これまでは印象材と呼ばれるゴム状の材料を使用して口腔内の型取りを行い、そこから石膏模型を作製し、その模型を技工所に送って技工物を作ってもらうという工程が一般的でした。この方法では、型取り時、模型作製時、そして技工物製作時の各段階で、わずかながらも誤差が生じる可能性があり、それらが積み重なることで適合精度の低い補綴物ができてしまうこともありました。 これに対し、現在ではIOS(口腔内スキャナー)を用いてお口の中を直接スキャンし、そのデータをもとにパソコン上で設計を行い、ミリングマシンと呼ばれる機械でセラミックやジルコニアなどの材料を高精度で削り出す方法が主流になりつつあります。このように、デジタル化によって中間工程を省略または簡素化できるため、結果としてより高精度な詰め物や被せ物の製作が可能となっております。
当院にあるデジタルシステムCERECはこちら
デジタル歯科では、スキャンデータや設計データのやり取りもすべてデジタルで行うため、通信環境の安定性は非常に重要です。当院では、データの送受信中に発生するエラー、特に無線LANで起こりがちな通信の途切れを避けるため、すべてのネットワーク環境を有線LANで構築しています。院内にはCat8規格の高速LANケーブルを配備し、2.5G対応のスイッチングハブ、10G対応の光回線およびルーターを導入することで、安定した高速通信を実現しております。また、患者様のお口の中の画像を表示・管理するために、iPadを用いてWi-Fi接続の「デンタルXR」というソフトも使用しておりますが、こちらにおいても院内に5台の2.5G対応メッシュWi-Fiルーターを設置し、通信の死角が生じないよう万全の体制を整えております。
当院の院長は、学生時代より興味を持ったことに対して深く探究する性格で、パソコンやデジタル技術についても、1980年代のPC-8801というコンピューターの時代から親しんでおり、Windowsの登場後は自作パソコンやLAN構築といった分野に興味を抱き取り組んできました。院内のネットワーク整備や、近年義務化されたマイナンバーカードによるオンライン資格確認の設定に関しても、その複雑さに関わらず、すべて一人で構築しております。
院長はまた、歯周病という複雑な因子が絡む病気に強い関心を持ち、長年勉強を続けてきました。歯周病は原因が一つに絞れない多因子性の疾患であるため、治療が難しいという特性がありますが、そうした「難しさにこそやりがいを感じる」という考えから取り組んでまいりました。現在では、その延長として臨床心理学にも関心を持ち、心の問題についての理解を深めようとしているところです。
日々の診療においても、スキャンした補綴物のデータは、基本的に診療の合間を活用して、次の患者様の診療が始まる前に迅速に設計および製作を行っております。自費診療のセラミックやジルコニアなどは焼成工程が必要となるため、完成までに数日間のお時間をいただいておりますが、保険診療に用いられるCAD/CAM冠については焼成が不要であるため、原則として当日中に技工物の製作が完了いたします。診療の進行状況によっては、翌日の装着も可能であり、結果としてCERECシステムの導入により、患者様の通院回数や治療期間の短縮に大きく寄与しております。また、従来の印象材による型取りでは、嘔吐反射による不快感を訴えられる患者様もいらっしゃいましたが、口腔内スキャナーの導入により、そうした不快感を大幅に軽減することができ、より快適に治療を受けていただけるようになりました。
このデジタル技術は、入れ歯の製作にも応用され始めており、現在は主に自費診療の範囲に限られてはおりますが、将来的には保険診療においても広く活用されることが期待されています。特に入れ歯の型取りは嘔吐反射を誘発しやすい処置の一つですが、スキャナーを用いることで患者様の負担を軽減できるほか、模型を物理的に郵送する必要がなくなるため、インターネット経由で技工所に即時データを送信できるという利点もあり、製作のスピードと精度の向上が見込まれます。ただし、現時点では歯のない粘膜部分についてはスキャナーでの正確な読み取りが難しい場合があるため、その際には従来の印象材による型取りを併用することがあります。なお、総義歯についてはすでに3Dプリンターでの製作が可能となっており、今後は金属バネを含む部分入れ歯についても3Dプリンターによる対応が可能になると予想されており、当院としてもその技術の進展を注視しております。
さらに、矯正治療の分野においてもデジタル化は進行しており、スキャンデータをもとに歯の動きをコンピューター上でシミュレーションすることが可能となってきました。これにより、大きな歯の移動を必要としない軽度の矯正であれば、マウスピース型矯正装置を用いて、より手軽に、かつ比較的リーズナブルな価格で治療を受けられる時代が近づいています。当院ではインプラント治療は行っておりませんが、インプラントの分野においてもCTデータを活用した治療計画が一般的となっており、こちらでもデジタル化の波が着実に広がっている状況です。
このように、今後ますます歯科医療全体がデジタル化に向かっていく中で、細川歯科医院では常に最新の技術と知識を積極的に取り入れ、患者様にとって最も良質で信頼のおける医療を提供できるよう、日々研鑽を重ねてまいります。(2025年6月記)