細川歯科医院の根幹を成す最大の強みは、院長が人生の節目において深く自分自身と向き合い、「内観(ないかん)」という徹底した自己省察を通じて育んできた、揺るぎない人間愛にあります。
それは知識や技術だけでは決して身につかない、長い葛藤と痛みの先にようやく辿り着いた、あたたかくも力強い心の在り方です。
院長が四十歳という人生の大きな節目を迎えた年の年末から年始にかけて、心の奥底では言葉にできない違和感と苦しさが膨らんでいました。
スタッフとの関係がうまくいかず、理想として描いてきた生き方や仕事の姿と現実との間に生じるズレに、誰にも打ち明けられないまま悩み続けていたのです。
当初は、衝突の原因は相手にある、環境が悪いのだと考え、自分を守ることで精一杯でした。
しかし模索を重ねるうちに、「もしかすると、うまくいかない原因は自分自身の中にあるのではないか」という問いが、静かに、しかし確実に心に芽生え始めました。
自分を変えたい、その一心で数多くの書籍を読み、学びを重ねてはみたものの、日常に戻れば感情は思うように制御できず、些細な出来事に苛立ち、後悔と自己嫌悪を繰り返す日々が続きました。
そんな折、当時所属していた勉強会、CDCで出会った藤巻先生から、「内観を通じて自分自身が大きく変わることができた」という率直な体験談を聞いたことが、院長の背中をそっと押しました。
そして院長は、一年の診療を終えた年末から年始にかけての一週間すべてを自分の内面と向き合うために使うという、大きな決断を下します。
携帯電話も外部との連絡も断ち、屏風に囲まれた静かな空間に身を置き、自らの人生を徹底的に振り返る過酷な時間は、決して楽なものではありませんでした。
しかし四日目、深い静寂の中で、院長はこれまで目を背けてきた一つの真実に直面します。
それは、自分が想像していた以上に多くの人に支えられながら生きてきたこと、そして同時に、知らず知らずのうちに多くの迷惑や負担を周囲にかけてきたという厳然たる事実でした。
その気づきは、院長の心に深く刻まれました。
年が明けて最初に立てた目標は、「この一年間、スタッフに対して決して怒らない」という、驚くほどシンプルでありながら、強い覚悟を要するものでした。
その誓いは一年で終わることなく、翌年も継続され、二年という長い時間をかけて、院長は自らの感情と向き合い続けました。
怒りを抑えるのではなく、怒りが生まれる前の自分の心に気づき、整えることを学んでいったのです。
「自分が変われば、周りも変わる」という言葉を体現するかのように、院長の変化に呼応して、院内の空気は少しずつ、しかし確実に柔らかく、温もりのあるものへと変わっていきました。
この経験は、その後、臨床心理学を深く学ぶ原動力ともなり、現在の診療姿勢の礎となっています。
今の細川歯科医院を支えているのは、過去に周囲にかけてきた迷惑の分だけ、いやそれ以上に、真心をもって人に尽くしたいという院長の静かで強い献身の想いです。
「お役に立ちたい」「して差し上げたい」というその純粋な願いは、歯科医院を閉院するその日まで、院長の魂に刻まれ続ける揺るぎない信念です。
人間として至らない点は多々ありますが、患者様一人ひとりの気持ちに寄り添い、同じ目線で歩み続ける姿勢こそが、細川歯科医院が誇る、何よりも大切な本当の強みなのです。
